吉田鎌ヶ迫 Yoshida Kamagasako, Inc.
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株式会社吉田鎌ヶ迫 ヨシダカマガサコ
インタビュー
インタビュー


 
主席プログラマ 鎌ヶ迫正俊が語るヨシダカマガサコ

【略歴】
 1979年鹿児島県生まれ。1997年鹿児島県立鶴丸高校卒業、2001年東京大学理科I類中退。
 2001年に株式会社オーロラシステム設計事務所に入社し、システム開発に従事。大手広告代理店向けオンライン広告管理システム開発にて設計・実装を担当。さらに大手広告代理店用の社内会計システムリプレースでは実装チームのリーダーを務める。またJava勉強会講師として後進の教育にも注力する。プライベートでは1998年に日本GNOMEユーザ会の幹事に就任、2003年にはGNOME Projectの本家committerに採用される。
 2004年4月、株式会社吉田鎌ヶ迫を二人で創業し、取締役副社長・主席プログラマを務め現在に至る。

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質問
 よろしくお願いします。まずは創業当時のことから聞いていきたいと思います。2004年4月に2人でヨシダカマガサコを創業したわけですが、技術面のことは鎌ヶ迫さん一人でこなしていたんですか?
鎌ヶ迫 正俊
 そうですね、営業や経理その他は吉田がやっていて、技術面はすべて私一人でやっていました。とにかく資金が少なかったので、「Spear」の開発にも私個人のノートPCを使っていましたし、メールサーバやファイルサーバも古いPCを持ち出して構築していました。交通費も馬鹿にならないので、コスト圧縮ということで私が住んでいた小岩に吉田が6畳の部屋を借りて、そこで二人で仕事をしていました(笑)。
 創業当初からできる限り節約していましたが、数か月後にはすでに「お金がないぞ」という状況になりました。でも、ピンチになるたびに周りの方に助けて頂いたので、おかげで何とかここまで来ることができました。ありがたいですね。


質問
 本当にたくさんの人に助けてもらってここまで来たんですね〜。社内ネットワークの構築や「Spear」の開発の他にもお客様の開発サポートまですべて一人でこなしていたとは、まさに百人力といった感じですね! それでは、まずヨシダカマガサコ内部のことについて聞いていきたいと思いますが主席プログラマとはどういう役割の仕事なんですか?
鎌ヶ迫 正俊
 単純に言えば開発者のリーダーということになります。もう少し具体的に言えば、プログラマの統括とプログラムの品質に責任を持つ立場ということでしょうか。作業環境の改善や、ソフトウェア開発方法論を検討、導入したりするのも仕事のうちです。
 あとは、正しいソフトウェアを作るということですかね。何が「正しい」のかという議論はあるかと思いますが、ソフトウェア的な美しさの他にも、例えば仕様がおかしければ「この仕様はおかしいぞ」と言うのもプログラマの仕事だと思っています。おかしい所を指摘できずにおかしい物を作ってしまったら、それは仕様を作った人だけでなくプログラムを作った人の責任でもありますよね。


質問
 それは素晴らしい考え方ですね。お客様に喜んで頂くには信頼性の高いソフトウェアを作ることが大前提ですからね。しかし技術寄りの会社というと固いイメージを想像しますが、ヨシダカマガサコの社風はどのような感じなんですか?
鎌ヶ迫 正俊
 まだ少人数の会社なので人間関係は非常にフラットですし、自由度も高いと思います。個人的な話で恐縮ですが、私は休みの日に出社して、真空管アンプを自作したりしています。ほのかに明るく光る真空管を見て、いかにもこいつ頑張っているなと感じられるアナログなアンプのほうが、デジタルなアンプより見ていても聴いていても楽しいですよ。自作すれば愛着も湧きますし。ヨシダカマガサコのオフィスではこの自作アンプからジャズやクラシックなどを流して、社内のBGMにしています。
 他にも、弊社ウェブサイトにもあるプロペラ帽を被って仕事していたり、ダーツで気分転換したり、皆で3時のおやつを食べたり、社員の誕生日には全員でケーキを食べながらお祝いしたり、と楽しくやっていますね。


質問
 確かにルールは自主性に任されている部分が多いので、堅苦しくなくて非常に良い雰囲気ですよね。仕事仲間や仕事環境についてはどうでしょう?
鎌ヶ迫 正俊
 皆、有能な人材が集まっていて素晴らしい仲間だと思います。少人数ですし和気あいあいと言った感じで仕事をしています。一人当たりのスペースも一般的な会社と比べるとかなり広くて快適なのではないでしょうか。むしろ広すぎて全部使い切れていないぐらいです。
 仕事の面で言うと、比較的開発者側に進捗管理が任されているので、自分の裁量で仕事ができるというところですね。なので、無理なスケジュールを押しつけられてどうこうということはないですよ(笑)。基本的には成果主義ですので、残業すれば偉いというような雰囲気もルールもありませんし。


質問
 それでは、ケータイ用P2Pフレームワーク「Spear」「SpearMulti」について聞きたいと思います。ヨシダカマガサコの最初のプロダクトとなるBREW版「Spear」ですが、ケータイでP2P通信をするにあたって問題になったことはありましたか?
鎌ヶ迫 正俊
 設立当初、開発に当たってはWindows上のエミュレータで仮想的に携帯電話を動かして、動作確認をしていました。エミュレータ上の携帯電話ではP2P通信が問題無くできていたんですが、実際の端末では制限がかけられていてP2P通信ができないということを知らなかったんですよ。
 しかし、auさんの方針が変わり、運が良いことに2005年の夏モデルからP2P通信ができるようになったんです。BREW版「Spear」も良いものが出来上がったので結果的には良かったのかなと思います。


質問
 少し時代を先取りしてしまったというわけですね(笑)。でもauさんでP2P通信できるようになって良かったですよね!開発するうえで苦労したことはありましたか?
鎌ヶ迫 正俊
 私は「Spear」全体と「SpearMulti」のサーバ周りが担当なのですが、サーバ周りは昔から仕事でやっていたのであまり問題はありませんでした。ちなみにBREW版「Spear」はCやC++で作るのですが、実はCを本格的に使ったのはこれが初めてだったんですよ。その点は苦労したと言えば苦労したのかなとは思います。
 ちょっと脱線してプログラミング言語の遍歴を申しますと、大学の授業でPascalを触ったのが初めてです。次にPerl、Rubyに手を出したことがきっかけでプログラミングにはまり、前に勤めていた会社の仕事でJavaとSQLを覚えて、プライベートでScheme、Smalltalk、PHPを勉強しました。最近ではHaskellとOCamlにも手を出しています。そんなこんなで色々な言語をやっていたこともあり、Cも2週間ぐらいで飲み込むことはできたので、苦労したとまでは言えないのかもしれません。


質問
 たったの2週間で飲み込めたというのはすごいですね!主要なプログラミング言語はすでに習得してしまっている感じですし。 他に問題になったことは無かったのですか?
鎌ヶ迫 正俊
 実装が一段落した後のテスト時には、意図的に電波が悪い状態を作り出すためにケータイをアルミホイルで巻いて動作を確認していました。アルミホイルは携帯電話の電波を遮断するんですね。ただ、そのままだとボタンの位置も画面の状態も分かりませんので、アルミホイルの上にマジックでボタンを書いたり、ディスプレイのところだけ小さく切り取ってその隙間から覗いてテストしていました(笑)。


質問
 アルミホイルで、ですか(笑)。それは面白いというか考えましたね。それでは、逆に一番嬉しかったことって何でしたか?
鎌ヶ迫 正俊
 やはり「Spear」が初めて採用されたタイトーさんの「パズルボブルONLINE!」がリリースされたときですね。自分が作ったプロダクトがたくさんの人に使ってもらえるというのは開発者冥利に尽きます。パズルボブルというコンテンツ企画の良さもあり、ネットでの評価も上々で、ほっと胸を撫でおろしたことが昨日のことのように思い出されます。アプリ起動時にはヨシダカマガサコのロゴも表示して頂けましたし、大変ありがたいことですね。
 また、リリースまでの間も色々とサポートさせて頂いていたのですが、頂いた要望は100%解決することができたことも良かったです。それに、リリース後の不具合も0件、エンドユーザー様からのクレームも0件で問題無く動いているということでしたので、皆様にご満足して頂けたようで非常に嬉しく思っています。


質問
 それはすごい!不具合0、クレーム0というのは喜ばしい結果ですね。お陰様で色々なお話が出てきて忙しくなってきましたよね。さて、現在開発者を募集していますがヨシダカマガサコはこういう開発者を求めています、みたいなビジョンはありますか?
鎌ヶ迫 正俊
 これは当然の話ですが、ちゃんとプログラムが書ける人ですね。さらに、やったことのない言語でも習得を厭わない人だと良いです、新しい言語をどんどん習得できるというか、新しいことは自分で調べて解決できるような人だと素晴らしいです。
 できるといい言語はC、C++、Java、SQLあたりです。その他、アーキテクチャ特有のノウハウに詳しいとGoodです。あとは、斬新なアイデアを出してくれる人とか。具体的な仕事内容についてはプロダクトラインがいくつかあるので、何を担当してもらうかは相談して決めていきたいと思っています。
 また、弊社のプログラマは世間で言うところのコーダーではありません。前に述べた通り、仕様にも口出しできます。と言うより、設計にも積極的に参加してもらうことになります。設計者寄りでもなく実装者寄りでもない、無理なくバランスの取れた設計ができるとベストですね。


質問
 プログラマである以上は新しい言語や技術の勉強は欠かせないですし、勉強好きな人だといいですよね。プログラミングに関すること以外では何か求めるものはありますか?
鎌ヶ迫 正俊
 これは「あるといいな」程度なのですが、社会貢献の意思があることが望まれます。弊社の理念は「ストレスのない、人間中心のコンピューティング環境・コンピューティング体験を追求する」です。弊社での仕事、つまりは自分のプログラムが世界をより良い方向へ変えていく。このことに魅力を感じられる方にはピッタリの会社だと思います。
 そういう意味では、オープンソース系への貢献の実績のある方に向いているかも知れませんね。斯く言う私自身、一時期はGNOME Projectのコミッタとしてソフトウェアのローカライゼーションに助力しておりました。


質問
 世の中にはソフトウェア会社は山ほどあると思いますけど、そのような中でヨシダカマガサコの会社としての魅力はどういう所にあると思いますか?
鎌ヶ迫 正俊
 「ユビキタス・コンピューティング」に特化していて、非常にブレが少ない会社であるというところですね。仕事の面では、設立当初から約4年弱のあいだ受託開発に傾かず、「Spear」ビジネスに集中しているところは一本筋が通っているのかなと思います。これからも自社独自のプロダクトやサービスの開発を積極的に行っていきますよ。
 また、「私はプログラマだ!」と胸を張って言える会社にしていけたら良いと思います。総じてIT産業においてプログラマの地位は高いとは言えないのが現状です。これは私個人の思いですが、プログラマの社会的な地位の向上、労働環境の改善などにも貢献できれば、と考えています。そのために起業したと言っても過言ではありません。一介のプログラマにできることは限られるかも知れません。しかし、起業して経営側に立つことで、その理想をより現実に近付けることができれば、と考えています。
 CSRという言葉がありますね。「企業の社会的責任」というヤツです。最近はプログラマ志望の学生が減っているそうです。IT業界は3Kだとか7Kだとか言われ、新卒者からも敬遠されつつあるのが現状です。しかし、プログラマの社会的地位向上を通じて質の高いプログラマを増やし、IT業界の活性化に貢献するのが弊社のCSRの一つであると個人的には考えています。


質問
 独自のプロダクトを開発できるというのは開発者にとってやりがいがあると思いますし、プログラマの社会的地位向上に貢献できるような企業になれたらとても素晴しいですね! では、日々仕事をする上で個人的に心掛けていることはありますか?
鎌ヶ迫 正俊
 プログラミングという仕事に限定していえば、ソースコードの美しさには常に気を配っています。エレガントで無駄のないプログラムを書きたいんですが、これが難しいんですよ。「目標は高く、現実は遥か遠く厳しく」といった感じです(笑)。まぁ、難しいからこそやりがいもあるんですけどね。
 これはちょっと極論ですが、美しくないプログラムにはバグがきっと必ずあります。逆に、美しいコードにはバグが入る余地がないんですね。それに、チームで作業する以上、ソースコードはそれを書いた人の持ち物でなくチームのメンバー全員の持ち物であり、皆の持ち物である以上は皆が理解できなくてはいけません。
 たとえ無理だとしても、プロのプログラマたるもの、ミロのヴィーナスのような誰が見ても美しいと思えるようなソースコードを目指すべきだと私は思っています。


質問
 ソースコードの書き方にはかなりこだわりがあるようですね。ただでさえ他人の書いたコードって読みにくいですし、キレイだとうれしいですよね。ちなみに得意&好きなプログラム言語ってありますか?
鎌ヶ迫 正俊
 得意な言語はJavaです。比較的書きやすいというか楽なんです(笑)。ある程度しっかりオブジェクト指向していますし、良い言語だと思います。
 また、仕事では全然使わないんですけど、好きな言語はSchemeとSmalltalkです。SchemeはOCamlやHaskell、Lispと同じ関数型言語という、CやJavaとは別の設計思想を持つ言語なのですが、その中でも言語仕様が特にシンプルに定義されているんですね。
 SmalltalkはMacintoshの原型を作ったパロアルト研究所にいたアラン・ケイ博士が開発した言語なのですが、言語のすべてをオブジェクトとメッセージで実現している徹底したオブジェクト指向言語です。if文やwhile文といった制御構造すらメッセージで実現しています。
 つまりは言語仕様の美しさですよね。シンプルな美しさと徹底した美しさというか。美的感覚は重要ですよ、プログラマには。


質問
 かなり広い範囲の言語にまで精通しているんですね。素晴らしいっ! では、ずばりプログラミングの魅力とは何だと思いますか?
鎌ヶ迫 正俊
 極端な話、自分の作りたいものを自分の思い通りに作れるというところですね。子供のころにブロック遊びをしたことってありますよね? それがPC上に移ったという感じです。
 ただ、ブロック遊びだと自分で組み立てて完成で、せいぜい親に見せて「すごいね」で終わりという感じだと思うんです。それだけでも楽しいことは楽しいのですが、ソフトウェアであればネットワークを介して世界中の人達に使ってもらえるわけですよ。それが嬉しいですね。物理的な制約をはるかに飛び越えて、端末さえあればいいわけですし。


質問
 確かにソフトウェアは1つ作ったら、それをいくらでもコピーして配ることができますし夢は広がりますね。そんなソフトウェアを開発するために使っているお気に入りのツールなどあれば教えてください。
鎌ヶ迫 正俊
 GNU Emacsです。非常にカスタマイズ性が高いツールで、基本的なエディタとしての機能の他、メールの読み書きもできますし、ウェブサイト閲覧もできます。当然プログラムも書けて、まぁ何でもできてしまうという。もうこれ無しでは生きていけないというぐらいカスタマイズして愛用しています。
 これはツールと言えるかわかりませんが、OSはやっぱりLinuxですね。Linuxの「Debian GNU/Linux」一択です(笑)。大学に入った直後はFreeBSDを使っていたんですけど、"Slackware"とか"Red Hat"とかいろいろ試しましたが、結局はDebianに落ち着きました。BREW開発をWindows上で行っていても、メールの読み書きなどで日常的にDebianを使っています。


質問
 ハードウェアも一見したところ変わった感じのモノを使っていますよね?あれはどのようなモノなんですか?
鎌ヶ迫 正俊
 まずはPFUの「Happy Hacking Keyboard(HHKB)」、しかも無刻印バージョンです。一般的なキーボードのアルファベットと数字の部分だけを切り出してキーの刻印を消した、非常にコンパクトでシンプルなキーボードです。Controlキーを多用するGNU Emacsとも親和性が高くて、作業が非常に楽になります。
 マウスはKensingtonの「Expert Mouse 5」というトラックボールを愛用しています。普通のマウスだとカーソルを画面の左端から右端へ動かすのにガッチャンガッチャンやったりするじゃないですか?トラックボールだとチャッチャッと指先だけで操作できるので楽ですよ。
 HHKBの生みの親である東大の和田先生の言葉を借りますが、『いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。』なんです。日々触るものだからこそ、いいモノにこだわりを持ちたいですね。


質問
 毎日触るものだからこそこだわりを持つという考えはいいですね。それでは、今後ヨシダカマガサコでやってみたいことや作ってみたい物はありますか?
鎌ヶ迫 正俊
 起動時にヨシダカマガサコのロゴが表示されるようなアプリとかサービスが世界中の人達の携帯電話で使ってもらえるようになったら嬉しいです。気がついたらこの人のケータイにもあの人のケータイにもって感じで。
 会社の規模には全くこだわっていないので、あまり人数が大きくなり過ぎず、うまく周りの皆さんの力を借りながら今の雰囲気のそのままで行けたらいいですね。


質問
 最後に、ヨシダカマガサコに興味をもって下さっている方にメッセージをお願いします。
鎌ヶ迫 正俊
 一緒にユビキタス・コンピューティングの歴史を作りましょう。
 Happy Hacking !


質問
 忙しいところ、ありがとうございました!
鎌ヶ迫 正俊
 楽しいインタビューをありがとうございました。


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